2025.12.23
コラム

舌癖・口呼吸が歯並びを悪化させる理由と今日から始める改善トレーニング

舌癖・口呼吸が歯並びを悪化させる理由と今日から始める改善トレーニング

なぜ舌癖や口呼吸が歯並びに影響するのか

お子さんがテレビを見ているとき、ふとお口がポカンと開いていることはありませんか?

実はこの何気ない習慣が、将来の歯並びに大きな影響を与える可能性があります。舌癖や口呼吸は、単なる「癖」として見過ごされがちですが、歯列矯正の専門家として長年診療に携わってきた経験から申し上げると、これらは歯並びを悪化させる重要な要因の一つです。

舌癖とは、舌が正しい位置に収まっていないことから、前歯を触ったり押したりする癖のことを指します。正しい舌の位置は「舌先が上の前歯の裏側にあり、舌の表側が上顎にくっついた状態」ですが、この位置から外れてしまうと、常に歯に不適切な力が加わり続けることになります。一方、口呼吸は鼻ではなく口で呼吸する習慣で、これにより口周りの筋肉バランスが崩れ、歯並びや顎の成長に悪影響を及ぼします。

これらの習慣が歯並びに与える影響は、想像以上に深刻です。舌や唇から歯に加わる力は、一見小さなものに思えますが、24時間365日継続的に作用することで、歯を動かし、顎の成長方向まで変えてしまうのです。特に成長期のお子さんにとって、この時期の習慣は将来の顔貌や咬合に大きく関わってきます。

舌癖が引き起こす具体的な歯並びの問題

舌癖にはいくつかのパターンがあり、それぞれ異なる歯並びの問題を引き起こします。

最も多く見られるのが、舌を前に突き出す癖です。飲み込むときや安静時に舌を上下の歯の間に出してしまうこの癖は、「開咬」という状態を招きます。開咬とは、奥歯を噛み合わせたときに上下の前歯の間にすき間ができてしまう状態で、前歯で食べ物を噛み切ることができなくなります。また、サ行やタ行、ナ行、ラ行などの発音が舌たらずになってしまう傾向もあります。

舌で前歯を押し出す癖がある場合、「上顎前突」いわゆる出っ歯の原因となります。日々前歯に力が加わり続けることで、徐々に歯が前方に傾いていきます。また、舌を歯と歯の間に挟む癖があると、「空隙歯列」という歯と歯の間に隙間ができる状態になることもあります。

舌癖が生じる主な原因

舌癖が生じる背景には、いくつかの要因があります。

離乳食の与え方が適切でなかった場合、唇を使って食べる練習が不十分になり、舌を前に出す癖がつくことがあります。離乳食は、しっかりと唇で挟み込み「パクッ」と食べる、しっかりと噛んで飲み込むことが大切です。また、4歳を過ぎても指しゃぶりが続いている場合、指をしゃぶることで前歯が傾き、その隙間が気になって舌で触る癖がつくことがあります。

乳歯の前歯が虫歯などで早期に抜けてしまった場合も要注意です。永久歯が生えてくるまでの期間が長くなると、抜けたところが気になって舌で触る癖がつきやすくなります。さらに、アレルギー性鼻炎などで慢性的な鼻づまりがあると、口呼吸になりがちで、舌の位置が後方へと下がってしまうことがあります。

舌小帯短縮症という先天的要因

舌の裏側の根元から伸びる筋を「舌小帯」と呼びます。この舌小帯が先天的に短い場合、舌の動きが制限され、筋肉を十分に発達させることが難しくなります。舌小帯短縮症の場合は、舌小帯を切除する治療によって舌の動きの自由度を高め、その後に口周りの筋肉を鍛えることで改善が期待できます。

口呼吸が歯並びと全身の健康に与える影響

口呼吸は歯並びだけでなく、お子さんの健康全般に多くのデメリットをもたらします。

口呼吸の習慣があると、口周りの筋肉である「口輪筋」の筋力が低下してしまいます。口輪筋の筋力が落ちるとさらに「ポカン口」が癖になるため、悪循環に陥りやすくなります。最近は風船遊びや口笛を吹く機会が少なくなったため、昔より口輪筋を鍛える機会が減りつつあり、現代は口呼吸のお子さんが増えている傾向があります。

口呼吸によって舌が下顎の位置にある傾向が強くなると、下顎に舌の力が加わり、下顎の成長ばかり促進されてしまい、上下の顎の位置が反対になる「受け口」状態を招きます。また、唇の筋力も落ちることで前歯を内側に抑える力が衰え、出っ歯にもなりやすいとされています。

口呼吸が引き起こす健康上の問題

鼻の穴はフィルターの役割を持っています。鼻毛や粘膜によって吸い込んだウイルスや病原菌、アレルギー物質が体内へ入らないよう守っています。しかし、口呼吸になるとウイルスなどが気管へ入りやすくなるため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすい身体になってしまいます。

唾液には細菌を洗い流す「自浄作用」と、虫歯や歯周病を引き起こす菌の増殖を抑える「抗菌作用」があります。口呼吸によって口内が乾燥して唾液の分泌量が少なくなると、菌が増殖しやすい口内環境になるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。また、口の中が乾燥すると唾液による自浄作用が弱くなり、食べ物が歯と歯の隙間に残りやすくなるため、細菌が繁殖しやすくなり口臭が強くなります。

口呼吸の検査時に見られる特徴的な所見

口呼吸がある場合、検査時にいくつかの特徴的な所見が認められます。上顎口蓋側の小臼歯から前歯部にかけて堤状の腫脹として観察される「堤状隆起」、呼気吸気により容易に乾燥が生じる「口唇乾燥」、吸気による乾燥部分によって生じた炎症が認められる部分と口唇裏部に接していた部分との境界部に認められる「口呼吸線」、唾液による自浄作用及び緩衝作用による再石灰化が働かないため進行する「歯面の脱灰」などがあります。

また、下顎が後退し前歯が突出している場合、口唇閉鎖が困難になり、口唇を閉じようとすると下唇が拳上され、オトガイ筋に過度な緊張が起き、梅干し状の皺が現れることもあります。

今日から始められる舌癖・口呼吸の改善トレーニング

舌癖や口呼吸は、適切なトレーニングによって改善することができます。

まず重要なのは、正しい舌の位置を意識することです。安静時の舌は「舌先が上の前歯の裏側にあり、舌の表側が上顎にくっついた状態」であるのが正常です。この正しい位置を意識し、少しずつ改善していきましょう。

口周りの筋肉を鍛える「あいうべ体操」

「あー」「いー」「うー」「べー」のお口で口周りの筋肉を鍛える「あいうべ体操」は、自宅で簡単に取り組めるトレーニングです。それぞれの動きを大きく、ゆっくりと行うことがポイントです。「あー」では口を大きく開け、「いー」では口を横に広げ、「うー」では口を前に突き出し、「べー」では舌を出して下に伸ばします。1日30回を目安に、毎日続けることで効果が期待できます。

MFT(口腔筋機能療法)によるトレーニング

MFT(口腔筋機能療法)は、お口周りの筋肉が正しく機能するようにサポートする治療法です。口呼吸や舌癖、悪い咬み合わせを改善し、歯並びや咬み合わせを安定させるために大切な役割を果たします。この治療によって、矯正治療の効果が長期間にわたって維持されやすくなります。

MFTでは、舌の位置の矯正、口唇閉鎖力の強化、スマイルの練習など、さまざまなトレーニングを行います。舌の位置が不適切だと歯並びや咬み合わせに悪影響を与えることがあるため、舌を正しい位置に導くトレーニングを行い、歯並びや咬み合わせを安定させます。口唇の閉じる力が不足していると口呼吸や歯並びに悪影響を与えることがあるため、口唇をしっかり閉じる力を強化するトレーニングも重要です。

マウスピース型矯正装置の活用

マウスピース型の取り外し式の矯正装置を使用することで、口周りの筋肉を鍛えることができます。MFTというトレーニングの併用で、より高い効果が期待できます。装置は日中1時間と就寝時の着用でよいため、学校で着用する必要がなく、お子さんの負担も少なくなります。

鼻呼吸への移行をサポートする方法

鼻、口周りの筋肉に問題がないけれど、口呼吸が癖になってしまっているケースでは、意識して鼻呼吸をするように指摘したり、ドラッグストアで売られている「鼻呼吸テープ」「鼻腔拡張テープ」を使用するなどして、鼻呼吸への改善を目指します。鼻呼吸テープとは、就寝中にお口に貼って鼻呼吸を促すものです。鼻腔拡張テープとは、鼻筋に垂直に交わるように貼り、鼻腔を広げることで鼻での呼吸を楽にするものです。

ただし、アレルギー性鼻炎などによって慢性的に鼻が詰まっている場合は、まず鼻の疾患を耳鼻咽喉科で治療しましょう。鼻詰まりが解消できれば、鼻呼吸への移行が可能になります。

小児矯正で根本から改善する方法

舌癖や口呼吸による歯並びの問題は、早期に介入することで効果的に改善できます。

小児矯正では、単に歯並びを整えるだけでなく、口腔機能や生活習慣の改善をトータルでサポートしています。必要に応じて、MFT(口腔筋機能療法)や姿勢指導、呼吸トレーニングなども取り入れ、お子さまの健やかな成長を全力で応援しています。

早期介入の重要性

口呼吸や舌癖などの症状は、成長が進むにつれて固定化してしまう傾向があります。そのため、できるだけ早い段階での診断と介入が有効です。6〜10歳の混合歯列期は、最も良いタイミングといえるでしょう。この時期は乳歯と永久歯が混在しており、顎の成長を利用して歯が並ぶスペースを作ることができるため、抜歯をするリスクが低くなります。

また、歯並びが悪くなる根本原因を改善するため、治療後に後戻りしてしまう可能性も低くなります。装置を取り外して歯みがきをすることができるため、ブラケットでの矯正に比べてむし歯になりにくく、お食事の際は装置を取り外すことができるため、お食事も普段通りにできます。

チーム歯科医療による包括的なアプローチ

当院では、各専門ドクターがチーム体制で治療を行う「真のチーム歯科医療」を提供しています。矯正歯科治療を最も得意としており、マウスピース矯正(成人用・子ども用)に対応しています。歯科用拡大鏡(マイクロスコープ)や歯科用CTなどの充実した医療設備を導入し、質の高い治療をご提供します。

キッズスペースや子ども用診療チェアなど、お子様に配慮した環境を整えており、モニターでアニメを観ながら楽しく診療が受けられます。また、ヨーロッパの高い基準をクリアする滅菌器を使用するなど徹底した衛生管理を行っているため、安心して通院していただけます。

矯正治療に伴うリスクと副作用について

矯正歯科治療には、いくつかのリスクや副作用があることをご理解いただく必要があります。最初は矯正装置による不快感や痛みなどがありますが、数日から1〜2週間で慣れることが多いです。治療期間は症例により異なりますが、成人矯正や永久歯がすべて生え揃っている場合は、一般的に1年半〜3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期に行なう第1期治療で1〜2年、永久歯がすべて生え揃ったあとに行なう第2期治療で1〜2年半を要することがあります。

歯の動き方には個人差があるため、治療期間が予想より長期化することがあります。装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、矯正治療では患者さまのご協力がたいへん重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。治療中は、装置がついているため歯が磨きにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。

まとめ:舌癖・口呼吸は早期改善が鍵

舌癖や口呼吸は、お子さんの歯並びや全身の健康に大きな影響を与える習慣です。

これらの習慣が引き起こす問題は、単に見た目の問題だけではありません。咬み合わせの異常、発音の不明瞭さ、感染症のリスク増加、虫歯や歯周病のリスク増加、口臭、さらには姿勢や集中力への影響など、多岐にわたります。しかし、適切なタイミングで適切な介入を行えば、これらの問題は改善することができます。

3歳までの指しゃぶりや軽度の舌癖は様子を見ても大丈夫ですが、4歳を過ぎても頻繁に続いている場合や、長時間続けてしまっている場合は、改善に向けたサポートが必要です。自宅でできる「あいうべ体操」や正しい舌の位置の意識づけから始め、必要に応じて専門的なMFT(口腔筋機能療法)や小児矯正を検討することをおすすめします。

「うちの子、口がいつも開いているかも?」「姿勢が悪い気がする…」といった気になるサインがあれば、早めに専門家にご相談ください。早期介入によって、お子さんの健やかな成長をサポートし、将来の健康的な口元を守ることができます。

お子さんの歯並びや口周りの習慣について、少しでも気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。専門ドクターがチーム体制で、お子さん一人ひとりに最適な治療方法について一緒に考えさせていただきます。

詳しい治療内容や無料相談については、歯科・矯正歯科 GOOD SMILEの公式サイトをご覧ください。お子さんの笑顔と健康のために、私たちが全力でサポートいたします。

 

監修者情報

歯科・矯正歯科 GOOD SMILE院長 薄井陽平

保有資格など 歯学博士
松本歯科大学 小児歯科学講座 非常勤講師
略歴 2001年3月 松本歯科大学歯学部卒業
2001年4月 歯科医師免許取得
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座入局
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座医員
2003年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助手
2004年4月 松本歯科大学 硬組織疾患制御再建学講座
臨床病態評価学博士課程入学
2007年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教
2009年6月 学位取得(歯学博士)
2012年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教 教任期満了
2015年10月 松本歯科大学 小児科学講座 非常勤講師就任

ごあいさつ

はじめまして、GOOD SMILEの薄井です。歯・矯正に関することはもちろん、口腔内のお悩みなら何でもご相談ください。患者様のお悩みが解消できるよう、もっとも合う治療方法について一緒に考えさせていただきます。

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