矯正治療では何を調べる?精密検査の内容と診断が重要な理由
矯正治療における精密検査とは
矯正治療を始める前に、必ず行われるのが「精密検査」です。
この検査は、単に歯並びの状態を確認するだけではありません。患者様一人ひとりの顎の骨格、歯の位置関係、咬み合わせの状態など、口腔内全体を詳細に調べることで、最適な治療計画を立案するための重要なステップとなります。
精密検査を行わずに矯正治療を開始することは、地図を持たずに目的地へ向かうようなものです。どこへ向かうべきか、どのルートを選ぶべきかが分からなければ、理想的なゴールにたどり着くことはできません。
矯正治療では、歯を動かせる量が顎の骨の幅によって決まっています。間違った診断のまま治療を進めてしまうと、歯根が骨から飛び出してしまうといったリスクも生じます。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、精密検査と正確な診断が不可欠なのです。

精密検査で行われる主な項目
矯正治療の精密検査では、複数の検査を組み合わせて総合的に診断を行います。
レントゲン撮影による骨格分析
レントゲン撮影は、精密検査の中でも特に重要な検査です。
パノラマレントゲンでは、顎全体を撮影し、歯の位置や数、歯根の長さや形、顎骨の状態などを確認します。お子様の場合は、まだ生えてきていない永久歯の数や位置も確認できます。
側面セファログラムは、90度真横から頭部を撮影する矯正歯科専門のレントゲンです。この検査により、頭蓋に対する上顎骨や下顎骨の前後的位置、上下の歯の位置や傾斜などを分析していきます。これを「セファロ分析」と呼び、矯正治療の計画を立てる上で最も重要な検査といえます。
正面セファログラムでは、顔の対称性や咬み合わせる平面の傾斜などを確認します。左右のズレが大きい場合は、外科的矯正治療が必要になることもあります。
口腔内・顔面写真の撮影
口腔内写真では、歯の形態や歯列、咬み合わせの状態を記録します。
治療経過の記録や治療前後の比較、患者様への説明に使用するためにも撮影を行います。客観的に自分の歯の状態を確認することができるため、治療のモチベーション維持にも役立ちます。
顔面写真は正面と側面の写真を撮影し、顔の形やバランス、左右対称性などを確認します。矯正治療は歯並びだけでなく、顔全体のバランスにも影響を与えるため、顔貌の記録も重要な資料となります。
歯型採取と口腔内スキャン
従来はシリコンやアルジネートといった材料で歯型を採取していましたが、最近では口腔内スキャナーを用いて、より精密かつ短時間で歯型をデジタルデータとして取得する方法が増えてきました。
当院でも最新のデジタルスキャン技術を活用し、お口の中を3Dモデルで再現しています。従来の粘土のような材料を使った型取りではないため、不快感がなく精密な歯型データを取得することができます。
歯科用CTによる三次元診断
歯科用CTで撮影した画像は三次元的なものになります。
歯根と骨の状態、歯の傾斜、通常のレントゲンでは写らない根尖や根分岐部の病巣など、目視や二次元のレントゲンでは把握しきれない情報を正確にデータ化することができます。近年の歯科治療においては、CTで撮影されたデジタルデータの活用が非常に重要となっています。
三次元再構築した画像を用いることで、埋伏歯の三次元的な位置の確認や顎変形症における顎矯正手術のシミュレーションを作成することも可能です。

精密検査が重要な理由
なぜ矯正治療において精密検査がこれほど重要なのでしょうか?
歯並びの問題点を正確に把握するため
患者様一人ひとりによって歯並びのお悩みは異なります。
同じ前歯であっても、どこが・どのように・どうなってほしいのか、カウンセリングも含めてお悩みを把握します。その後、歯並びが原因なのか骨格が原因なのかなど、原因の特定をしていきます。
ガタガタ・出っ歯・受け口・前歯が咬み合わないなど、人によって問題はさまざまです。それぞれの問題を解消し、きれいな歯並び・咬み合わせをつくるためには、どのような処置をして矯正治療を行うべきか、精密検査から得たレントゲンやスキャンデータなどをもとに治療計画を立て、診断を行います。
一人ひとりに合わせた治療計画の立案
精密検査では、患者様の歯の位置や大きさ、骨の構造、咬み合わせなどを総合的に診査診断し、安心安全で効果的かつその患者様に合った治療計画を立案します。
精密検査からわかる情報は、治療計画を作るために必要不可欠なのです。
歯の大きさと顎骨の大きさに不調和がある場合、歯を並べるスペースを確保する必要があります。精密検査で得られたデータから歯と顎骨の大きさを計測し、歯をきれいに並べて正しい咬み合わせに導くためには何ミリのすき間を作る必要があるのかを確認します。
そして、そのすき間を確保する方法として抜歯が適切な治療と判断されれば、どの歯を抜く必要があるのか慎重に治療計画を立てる必要があります。
治療におけるリスクの軽減
矯正治療にもリスクはあります。
歯を動かせる量が骨の幅によって決まっていますが、間違った診断によって治療を進めると、歯の根っこが骨から飛び出してしまう可能性があります。歯の移動量などの問題で、どうしても回避できないリスクもありますが、精密検査と診断をしっかりと行うことで、矯正治療によるリスクを最小限に抑えられます。
また、治療中に金属などのアレルギー症状が出ることがあります。治療中に「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口を開けにくい」などの顎関節症状が出ることもあります。こうしたリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることができるのも、精密検査の大きなメリットです。

精密検査を受ける際の注意点
精密検査を受ける際には、いくつか知っておくべきポイントがあります。
検査にかかる時間と費用
精密検査の所要時間は、一般的に45分程度です。
費用はクリニックによって異なりますが、全ての検査を合わせて30,000〜50,000円が平均的です。また、検査の料金にその後の診断料金が含まれているケースと、別になっているケースがあるため、検査を受ける前に料金の詳細を確認しておくことをおすすめします。
検査中の不快感について
基本的には痛みを感じるような検査はありません。
ただし、顎関節症で口を開けるのが辛かったり、嘔吐反射などの症状がある場合、口腔内写真や歯型とりで痛みや不快感が生じることがあります。このような症状がある方は、検査前に担当医またはスタッフにご自身の症状を伝えておくと良いでしょう。
精密検査後の流れ
検査をした後は、採取したデータを担当医が分析し、現在の状態とどのような治療が適切かを具体的にお伝えする「診断」へと移ります。
検査後の診断では、カウンセリングの時点では不確定だった治療期間・治療費・治療方針などが判明することから、具体的な治療プランを知るためには、この精密検査と診断が不可欠といえるでしょう。
抜歯・非抜歯の判断も精密検査から
矯正治療を検討する際、多くの方が気にされるのが「抜歯の必要性」です。
抜歯が必要なケースとは
歯と顎の大きさのバランスがとれていない場合、歯を並べるための十分な顎骨のスペースがないと、歯はきれいに並ぶことができません。そのため、歯が重なりあって生えたり、歯茎の上の方で止まってしまう状態になります。
歯が並ぶスペースが足りないのに、無理やりきれいに並べようとすると、歯が骨からはみ出してしまったり、上下の前歯が無理な傾斜となり口元が膨らんだ仕上がりとなってしまいます。これを解消するためには歯を並べるスペースを確保する必要があり、その手段の一つが抜歯となります。
また、上下の前歯が前に傾斜している「上下顎前突」の場合も、抜歯矯正の対象となることがあります。このような状態だと見た目に影響があるだけでなく、歯並びの安定性や歯の健康寿命にも関わってきます。
非抜歯での矯正治療の可能性
マウスピース型矯正装置は、「奥歯を後ろに移動させる」「歯列の幅を横に拡大させる」など得意な分野があり、抜歯なしで行える矯正の適応範囲が従来の方法に比べて広がっています。
ただし、全ての症例で抜歯をしなくても歯並びが治るわけではありません。「歯が生えている向きや位置に問題がある」「前歯の大きな突出」「重度の虫歯や歯周病がある」などのケースでは、抜歯をして治療をした方がバランスの良い健康な状態になる場合があります。
矯正治療で抜歯が必要かどうかは人によって異なります。治療前に抜歯が必要かどうかを正しく見極めて治療方法を提案してもらうことが大切です。

精密検査を行う矯正歯科の選び方
適切な矯正治療を受けるためには、信頼できる矯正歯科を選ぶことが重要です。
セファログラム検査を実施しているか
セファログラムは診断のグローバル・スタンダードで、特に子どもの患者様では顎顔面の成長バランスや成長方向、量の予測をするために不可欠な検査です。
セファログラム検査を実施していない矯正歯科は、適切な診断を行うための基本的な設備が整っていない可能性があります。
精密検査を実施し分析・診断しているか
矯正歯科治療を行うためには、口腔内検査、顎機能と咬合機能の検査、顎のプロポーション検査、筋機能の検査、模型分析、頭部X線規格写真の分析などを実施した上で診断を行うことが不可欠です。
精密検査もせずに装置を装着するのは「あり得ない」ことです。踏むべきプロセスを踏まずに治療に入ることで、顔だちや歯列のアンバランスを招いたり、上下の歯がきちんと咬み合わないというトラブルにつながります。
治療計画と費用について詳細に説明しているか
検査結果を詳細に分析した上で診断を行い、治療計画を立案します。
治療計画については、わかりやすい治療のゴールやそのプロセスを患者様に示しながら、それぞれの患者様に適した治療装置とその効果、治療期間、第二期治療の可能性、保定、後戻りの可能性や治療のメリット・デメリットおよび抜歯・非抜歯について説明を行います。
治療費用についても、治療費、調節料、支払い方法、装置が壊れたときの対応、転医あるいは中止する場合の精算についても詳細説明を行い、患者様の同意を得てから治療を行うことが重要です。
まとめ
矯正治療における精密検査は、単なる形式的な手続きではありません。
レントゲン撮影、口腔内・顔面写真撮影、歯型採取、歯科用CT撮影など、複数の検査を組み合わせることで、患者様一人ひとりの口腔内の状態を正確に把握し、最適な治療計画を立案することができます。
精密検査を行うことで、歯並びの問題点を正確に把握し、治療におけるリスクを最小限に抑えることができます。また、抜歯・非抜歯の判断も、精密検査のデータに基づいて科学的に行われます。
矯正治療を検討されている方は、まず信頼できる矯正歯科で精密検査を受け、ご自身の口腔内の状態を正確に把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
当院では、最新の設備を用いた精密検査と、豊富な経験に基づく診断で、患者様一人ひとりに最適な治療計画をご提案しています。歯並びや咬み合わせでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
詳しい検査内容や治療の流れについては、歯科・矯正歯科 GOOD SMILEまでお問い合わせください。皆様の笑顔のために、質の高い矯正歯科治療をご提供いたします。

監修者情報
歯科・矯正歯科 GOOD SMILE院長 薄井陽平
保有資格など 歯学博士
松本歯科大学 小児歯科学講座 非常勤講師
略歴 2001年3月 松本歯科大学歯学部卒業
2001年4月 歯科医師免許取得
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座入局
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座医員
2003年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助手
2004年4月 松本歯科大学 硬組織疾患制御再建学講座
臨床病態評価学博士課程入学
2007年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教
2009年6月 学位取得(歯学博士)
2012年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教 教任期満了
2015年10月 松本歯科大学 小児科学講座 非常勤講師就任
ごあいさつ
はじめまして、GOOD SMILEの薄井です。歯・矯正に関することはもちろん、口腔内のお悩みなら何でもご相談ください。患者様のお悩みが解消できるよう、もっとも合う治療方法について一緒に考えさせていただきます。