矯正中の食事で困らない!痛い日・外食・学校給食の乗り切り方
矯正中の食事、こんな悩みありませんか?
歯科矯正を始めると、多くの方が食事で悩みます。
「装置を付けた直後から歯が痛くて、何も食べられない」「学校給食で困っている」「外食の時、何を選べばいいのかわからない」……こうした声は、矯正治療を受ける方なら誰もが経験することです。
特に装置装着後の48〜72時間は痛みのピークとなり、普段通りの食事が難しくなります。しかし、適切な工夫をすることで、矯正中の食事の負担を軽減できる可能性があります。この記事では、痛みが強い時期の乗り切り方から、外食や学校給食での実践的な対処法まで、矯正生活を快適に過ごすための食事術を詳しく解説します。

なぜ矯正中は食事が痛いのか?
矯正治療では、歯に力をかけて少しずつ移動させていきます。
歯を後ろに動かす場合を例にとると、後ろ側の歯根膜は押しつぶされ、元の長さに戻ろうとします。歯根膜がシグナルを出すと、その分だけ歯槽骨を溶かしてスペースを作るのです。一方、歯の前側は引っ張られて歯根膜が伸び、伸びた歯根膜も元に戻ろうとして骨を作り出します。
このように骨を作ったり溶かしたりしながら歯は動いていきますが、その際に「炎症」が起きている状態となり、痛みが生じます。歯を動かすことで生じる痛みのピークは2〜3日間です。その後徐々に痛みは減り、1週間程度で落ち着いてきます。
装置タイプによる痛みの違い
ワイヤー矯正の場合、1ヶ月に1度の来院時にワイヤーを締めたり交換を行います。
このときすべての歯に対して一気に力がかかってくるので、直後から痛みが出てきます。また、1ヶ月で歯を動かしたい分の力をかけるため、痛みとしては大きいものとなります。最初に強く痛みますが、徐々に痛みはおさまってきます。
一方マウスピース矯正の場合、マウスピースの交換は1週間に1回程度で患者様ご自身で行います。マウスピース矯正の場合も同様に、マウスピースの交換をした直後は痛みがあります。しかし歯を一気に動かすのではなく部分的に動かしていくため、痛みも部分的なものとなります。1週間で歯を動かしたい分しか力がかからないため、痛みはワイヤー矯正と比べると小さいものとなります。
口内炎ができやすくなる理由
矯正装置を付けると、唾液の量が少なくなり、細菌が増えやすくなります。
これが口内炎の原因となります。口内炎は特に唇の裏によく出来ますが、頬などでも発生することがあります。これは矯正器具が粘膜を傷つけるからです。また、金属アレルギーによる口内炎も考えられます。特に金属のワイヤー矯正をする際は、アレルギー反応に気を付けてください。

痛みのピーク48〜72時間の乗り切り方
装置装着直後から48〜72時間は、痛みが最も強い時期です。
この期間は無理に噛もうとせず、柔らかいものを食べることをおすすめします。痛みがある時は、普通に炊いたごはん粒でも痛くて噛めない事があります。柔らかいものを食べることで、痛みを和らげることが期待できます。
痛い時期におすすめの食べ物
痛みに合わせて食形態を調整しましょう。
- お粥……痛みに合わせて5倍粥、7倍粥と調節すると良いでしょう
- リゾット……野菜と一緒にクタクタに煮込んでしまえば野菜の栄養も取れますし、調味料やスープを変えれば味の変化も楽しめます
- 煮込みうどん……痛みがある時はうどんでさえかたく感じます。噛みきるのもツラい時があるので、食べやすい大きさにカットしておくと良いでしょう
- 茶碗蒸し……蒸し器を使って作らなくても、今は温めるだけで食べられるものがあります。卵を使っているので、タンパク質も摂ることができます
- オムレツ・スクランブルエッグ……タンパク質も摂ることができ、舌でつぶす事ができるため胃の負担を軽くすることができます
- 豆腐……高タンパク質で何よりも柔らかいです。ニンジンなど一緒に湯豆腐にすれば野菜もとれて栄養バランスも良くなります
- ポトフ……じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、大根、カブ、ブロッコリーなどを一口大にカットした鶏肉と一緒にスープで煮込めば、舌でつぶすことができる位の柔らかさになり食べやすいです
- ポテトサラダ……コンビニなどでも手に入るポテトサラダは噛まずに食べることが出来ます。手作りの時は、キュウリは細かく刻んであげると食べやすいでしょう
痛み止めの使い方
歯が移動しているとき歯の周辺では「炎症」が起きている状態となります。
痛み止めの中には強い抗炎症作用を有しているものがあり、これを飲むことで歯の動きが悪くなることがあるため注意が必要です。これらはNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛薬であり、具体的にはロキソニンやイブプロフェン、ボルタレンなどがあります。そのため矯正中の歯の痛みに対しては、抗炎症作用のほとんどないカロナールなどを飲むと良いでしょう。カロナールが効かないようであれば、ロキソニンなどのNSAIDsを服用してください。ただし、痛み止めの使用については個人差がありますので、担当の歯科医師にご相談いただくことをおすすめします。
外食時の選び方とコツ
矯正中でも外食を楽しむことはできます。
柔らかく煮込んだ料理や麺類、卵料理などの顎に負担が少ない料理を優先しましょう。噛む回数を減らすために一口サイズに切ることも大切です。前歯で噛み切らないように注意してください。
外食で選びやすいメニュー
以下のようなメニューがおすすめです。
- うどん・そば……柔らかく煮込んだものを選びましょう。ただし、ワイヤーに挟まりやすいので食後のケアが必要です
- オムライス……卵が柔らかく、ご飯も比較的食べやすいです
- 親子丼……卵でとじてあるので、柔らかく食べやすいです
- カレー……ルーと一緒に煮込まれた具材は柔らかくなっています。ただし、着色しやすいので注意が必要です
- ハンバーグ……柔らかく調理されたものを選びましょう
- グラタン……柔らかく、噛む力が少なくても食べられます
外食時の注意点
硬いものは避けましょう。
ナッツ、せんべい、硬いパンの耳などは装置を壊す原因になります。粘着性の高いものも避けてください。キャラメル、ガム、お餅、ソフトキャンディなどは装置に絡まりやすく、除去するのに苦労します。特に糸引きチーズは絡まると除去するのに苦労するので避けた方が良いです。
繊維質の強いものにも注意が必要です。生のセロリ、ごぼう、繊維の強い肉などは、装置に挟まりやすくなります。リンゴやとうもろこしなどの丸かじりは避けて、小さく食べやすい大きさに切りましょう。

学校給食での工夫
学校給食は選択肢が限られているため、工夫が必要です。
お子様の場合は特に、小さく切ることが大切です。前歯で噛み切らないように注意し、奥歯で優しく噛むように教えてあげましょう。痛みが強い時期は、先生に相談して食べやすいものを優先的に食べることも検討してください。
給食で食べやすいもの・食べにくいもの
給食メニューの中でも、食べやすさに差があります。
食べやすいものは、カレーライス、シチュー、煮込みうどん、オムレツ、茶碗蒸し、ポタージュスープ、マッシュポテト、豆腐料理などです。食べにくいものは、硬いパン、揚げ物(衣が硬い)、生野菜サラダ、リンゴの丸かじり、とうもろこしの丸かじり、硬い肉料理などです。
お弁当の工夫
お弁当を持参できる場合は、柔らかいものを中心に詰めましょう。
卵焼き、ハンバーグ、煮物、柔らかく煮た野菜、豆腐料理などがおすすめです。硬いものは小さく切って入れるか、避けるようにしましょう。痛みが強い時期は、おにぎりではなく柔らかいご飯を詰めることも検討してください。
矯正中に避けたい食べ物
矯正中は、装置を守るために避けたい食べ物があります。
硬い食べ物
ナッツ、せんべい、硬いパンの耳、氷、硬いキャンディなどは、装置を壊す原因になる可能性があります。
装置が外れたり破損したりすると、治療期間が延びる可能性があります。硬いものを食べたい場合は、小さく砕いてから食べるようにしましょう。
粘着性の高い食べ物
キャラメル、ガム、お餅、ソフトキャンディ、糸引きチーズなどは、装置に絡まりやすく、除去するのに苦労します。
特にワイヤー矯正の場合、装置のすき間に食べ物が引っかかりやすく、繊維質の野菜や細かくバラけやすい食材は詰まりやすい傾向にあります。マウスピース矯正では装着中に食事をしないため詰まりにくいですが、装置の着脱のたびに歯の間に残った食べかすが気になるという声もあります。
着色しやすい食べ物
コーヒー、カレー、トマトソース系、キムチ、紅茶やルイボスティーなどは、装置や歯を着色させる可能性があります。
特にマウスピース矯正の場合、装置が黄ばむことがあります。これらを摂取した後は、早めに歯磨きをするか、水で口をゆすぐようにしましょう。
食後のケアと装置トラブルの予防
矯正中は、食後のケアが非常に重要です。
装置のすき間に汚れが残りやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯が動くことで見えなかった虫歯が見えるようになることもあります。
効果的な歯磨き方法
ワイヤー矯正の場合、装置のすき間に汚れが残りやすいため、歯磨きに時間がかかります。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどを活用しましょう。マウスピース矯正の場合も、食事のたびに装置を外し、歯磨きしてから再装着する必要があります。痛みが強くても、丁寧に行うことで虫歯のリスクを低く保つことが期待できます。
装置が当たって痛い時の対処法
装置が粘膜に当たって痛みが出たり、擦れて口内炎ができることもよくあります。
装置によって擦れて外傷や口内炎ができた場合は、歯科用ワックスを活用します。装置がよく当たる部分に歯科用ワックスをつけて粘膜を保護することで、痛みが緩和するので応急処置に有効です。炎症がひどく感じる場合は、無理せずに歯科医院に相談してください。

栄養バランスを保つための工夫
矯正中は食べられるものが限られるため、栄養バランスが偏りがちです。
しかし、歯列矯正には栄養バランスが重要です。歯槽骨の「吸収」と「再生」を繰り返し歯を動かすので、新陳代謝を活発にすると治療期間が短くなる可能性があります。そのためには栄養のある食事、十分な睡眠、規則正しい生活を送ることを心掛けましょう。
タンパク質の摂取
タンパク質は、歯や骨の形成に欠かせない栄養素です。
豆腐、卵、白身魚、鶏そぼろ、ヨーグルトなど、柔らかくて食べやすいタンパク質源を積極的に摂りましょう。茶碗蒸しは卵を使っているので、タンパク質も摂ることができます。ポテトサラダにツナを入れることでタンパク質を補うことも出来ます。
ビタミンの摂取
口内炎の回復にはビタミンが助けになります。
バナナやヨーグルトは柔らかくて栄養もたっぷりです。野菜はポタージュや根菜の煮物、完熟アボカドなど、柔らかく調理したものを選びましょう。ポトフのように、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、大根、カブ、ブロッコリーなどを一口大にカットした鶏肉と一緒にスープで煮込めば、舌でつぶすことができる位の柔らかさになり食べやすいです。
まとめ:矯正中の食事は工夫次第で快適に
矯正中の食事は、確かに制限がありますが、適切な工夫をすることで負担を軽減できる可能性があります。
装置装着後48〜72時間の痛みのピーク時は、お粥やリゾット、茶碗蒸しなど柔らかいものを中心に食べましょう。外食時は、うどんやオムライス、ハンバーグなど柔らかく調理されたメニューを選び、一口サイズに切って食べることが大切です。学校給食では、先生に相談しながら食べやすいものを優先し、お弁当の場合は柔らかいものを中心に詰めましょう。
硬いもの、粘着性の高いもの、着色しやすいものは避け、食後は丁寧なケアを心がけてください。栄養バランスを保つために、タンパク質やビタミンを意識的に摂取することも重要です。
矯正治療は、美しい歯並びと健康的な口元を手に入れるための大切なプロセスです。食事の工夫を通じて、快適な矯正生活を送りましょう。
矯正治療に関するご相談や、食事についてのアドバイスが必要な場合は、ぜひ専門医にご相談ください。歯科・矯正歯科 GOOD SMILEでは、患者様一人ひとりに合わせた矯正治療と、治療中のサポートを提供しています。

監修者情報
歯科・矯正歯科 GOOD SMILE院長 薄井陽平
保有資格など 歯学博士
松本歯科大学 小児歯科学講座 非常勤講師
略歴 2001年3月 松本歯科大学歯学部卒業
2001年4月 歯科医師免許取得
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座入局
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座医員
2003年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助手
2004年4月 松本歯科大学 硬組織疾患制御再建学講座
臨床病態評価学博士課程入学
2007年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教
2009年6月 学位取得(歯学博士)
2012年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教 教任期満了
2015年10月 松本歯科大学 小児科学講座 非常勤講師就任
ごあいさつ
はじめまして、GOOD SMILEの薄井です。歯・矯正に関することはもちろん、口腔内のお悩みなら何でもご相談ください。患者様のお悩みが解消できるよう、もっとも合う治療方法について一緒に考えさせていただきます。