2025.12.23
コラム

骨格性不正咬合の治療法|手術矯正と補助矯正の違いを徹底解説

骨格性不正咬合の治療法|手術矯正と補助矯正の違いを徹底解説

骨格性不正咬合とは何か

「受け口」や「出っ歯」といった歯並びの問題は、単に歯の位置だけの問題ではないことをご存知でしょうか。

骨格性不正咬合とは、上あごや下あごの骨格そのものの大きさや位置関係に問題があることで生じる不正咬合のことです。歯の位置だけが原因の「歯性不正咬合」とは異なり、顎の骨の成長や発育に起因するため、治療方法も大きく異なります。骨格性不正咬合は、顎顔面骨格の動的バランスが崩れることで発生し、咬合高径や顎の成長方向が深く関わっています。

骨格性不正咬合には主に「骨格性反対咬合(下顎前突症)」と「骨格性上顎前突症(下顎後退症)」の2つのタイプがあります。骨格性反対咬合では、上あごの垂直的下降の要素が強く、後方臼歯が生える余地が少ないため咬合平面が極端に平坦化します。その結果、下あごが大きく前方に回転して咬合を適応させようとするため、下あごが前方位を示すことになります。一方、骨格性上顎前突症では、上あごの前方回転の要素が強く、後方臼歯部の垂直的高径の増加が不足するため、後方部の咬合平面が急傾斜のままで湾曲も強くなります。

このような骨格的な問題は、見た目だけでなく、咀嚼機能や発音、さらには顎関節への負担など、さまざまな機能的問題を引き起こす可能性があります。

骨格性不正咬合の原因と診断

骨格性不正咬合の原因は多岐にわたります。

遺伝的要因が大きく関与しており、家系に反対咬合を認める場合は、身長が伸びる成長期に下あごも一緒に症状がひどくなる傾向があります。日本人では反対咬合の発現頻度が世界で最も高く、5~6%と言われています。先祖に反対咬合の方がいた可能性も考えられ、遺伝的背景は無視できない要因となっています。

また、成長期における顎顔面骨格の成長パターンも重要な要因です。咬合高径と顎顔面骨格の成長には密接な関係があり、過剰な垂直的・咬合高径の増加は前歯部の開咬や下顎前突症を生み出します。逆に咬合高径があまり増加せず、咬合平面が急峻になる場合は、下あごが後方に回転して開口を伴う上顎前突症を生じることがあります。

診断に必要な検査

骨格性不正咬合の正確な診断には、複数の専門的な検査が必要です。頭部エックス線規格写真(セファロ)を用いた形態的・機能的分析により、骨格形態のバリエーションを詳細に診査します。また、顎運動検査機器を用いた下顎頭限界運動の分析や、咬合器を用いた機能的模型分析も重要な診断ツールとなります。

これらの検査結果を総合的に評価することで、歯性の問題なのか骨格性の問題なのかを判別し、最適な治療方針を決定することができます。骨格性不正咬合と診断された場合、治療法の選択肢として「手術矯正」と「補助矯正」があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。

手術矯正による治療法

手術矯正は、顎の骨を手術によって移動させることで、骨格的な問題を根本から解決する治療法です。

「顎変形症」と診断された場合、健康保険を用いた矯正歯科治療を受けることができます。矯正歯科治療だけではなく手術や入院についても保険が適用されるため、経済的な負担を軽減できる点が大きなメリットです。手術矯正は、あごを手術しなければ上下の正常な咬み合わせが獲得できない症例に適用されます。

手術矯正の流れ

手術矯正治療は、通常3つの段階に分かれます。まず術前矯正として、手術を行いやすくするために歯並びを整えます。この段階では、マルチブラケット装置を用いて歯の位置を調整していきます。次に外科手術の段階では、全身麻酔下で顎の骨を切断し、適切な位置に移動させて固定します。手術は大学病院などの専門施設で行われ、通常1~2週間程度の入院が必要です。

手術後は術後矯正として、咬み合わせの微調整を行います。この段階で最終的な咬合の安定を図り、機能的にも審美的にも満足のいく結果を目指します。治療期間は症例によって異なりますが、一般的に2~3年程度を要することが多いです。

手術矯正のメリットとデメリット

手術矯正の最大のメリットは、骨格的な問題を根本から解決できることです。顔貌の改善効果も大きく、機能的な改善だけでなく審美的な満足度も高い治療法と言えます。また、顎変形症と診断された場合は保険適用となるため、自費診療と比較して経済的負担が軽減されます。

一方、デメリットとしては、全身麻酔下での手術が必要であること、入院が必要であること、術後に腫れや痛みが生じることなどが挙げられます。また、治療期間が長期にわたることも考慮すべき点です。しかし、これらのデメリットを上回る治療効果が期待できる症例も多く、専門医との十分な相談の上で治療方針を決定することが重要です。

補助矯正による治療法

補助矯正は、手術を行わずに矯正装置のみで治療を進める方法です。

骨格的な問題が比較的軽度な場合や、成長期のお子様の場合には、補助矯正による治療が選択されることがあります。特に成長期においては、上あごの成長を促し、下あごの成長を抑えるような矯正装置を用いることで、上下のあごの前後差を改善することが可能です。

成長期における補助矯正

骨格性反対咬合の場合、低年齢で上あごの成長を促し、下あごの成長を抑えて上下のあごの前後差を改善する矯正装置を用います。「上あご前方牽引装置」と呼ばれるこの装置は、主に夜間装着してあごの成長をコントロールします。また、上の歯列が狭い症状では、歯列や上あごを横方向に拡大して発育を刺激するような装置を用いることもあります。

成長期の治療は、一期治療(早期治療)と二期治療(本格的治療)に分かれることが一般的です。一期治療後のあごの成長や歯並びを観察して、必要ならば二期治療で仕上げを行います。永久歯が全て生え揃う12歳頃は下あごの成長が最も盛んな時期であるため、長期的な経過観察が必要となります。

成人における補助矯正

成人の場合、骨格の成長が終了しているため、成長をコントロールすることはできません。しかし、骨格的な問題が比較的軽度であれば、マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を用いて、歯の位置を調整することで咬み合わせを改善することが可能です。

当院では、透明で目立ちにくいマウスピース型矯正装置にも対応しています。装着していても気づかれにくいので、人前に出るお仕事でも不安なく治療を受けられます。また、着脱可能で食事やブラッシングも普段通りに行えるため、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。

補助矯正の限界

補助矯正には限界があることも理解しておく必要があります。骨格的な問題が重度の場合や、矯正装置により成長発育をコントロールできない場合、成人で骨格の改善を必要とする場合には、手術矯正が必要になることがあります。治療開始前に十分な診査・診断を行い、補助矯正で対応可能かどうかを見極めることが重要です。

治療法の選択と治療期間

手術矯正と補助矯正、どちらを選択すべきかは、患者様の年齢、骨格的な問題の程度、治療に対する希望などを総合的に考慮して決定します。

成長期のお子様の場合、まず補助矯正による早期治療を開始し、その後の成長を観察しながら必要に応じて二期治療や手術矯正を検討するアプローチが一般的です。家系に反対咬合を認める場合は、身長の伸びにつれて下あごの成長が突き出してくるため、長期的な経過観察が必要となります。

治療期間の目安

補助矯正の場合、成人矯正や永久歯がすべて生え揃っている場合は、一般的に1年半~3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期に行う第1期治療で1~2年、永久歯がすべて生え揃ったあとに行う第2期治療で1~2年半を要することがあります。手術矯正の場合は、術前矯正、手術、術後矯正を合わせて2~3年程度が一般的です。

治療期間は症例により異なり、歯の動き方には個人差があるため、予想より長期化することもあります。装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、患者様のご協力が治療結果や治療期間に大きく影響します。

治療費について

矯正歯科治療は原則自費診療であり、社会保険や国民健康保険を使用することはできません。自費診療でマルチブラケット装置による矯正歯科治療を行った場合、総額でおおむね80万円から100万円くらいになります。ただし、顎変形症と診断された方や、口唇口蓋裂などの厚生労働大臣が定める疾患の場合は、健康保険を用いた矯正歯科治療を受けることができます。

当院は指定自立支援医療機関並びに顎口腔機能診断施設であり、保険適用の矯正歯科治療にも対応しています。治療費については、初診時に詳しくご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

治療に伴うリスクと注意点

矯正歯科治療には、いくつかのリスクや副作用が伴うことを理解しておく必要があります。

最初は矯正装置による不快感や痛みなどがありますが、数日から1~2週間で慣れることが多いです。治療中は装置がついているため歯が磨きにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯を動かすことにより歯根が吸収され短くなることや、歯肉が痩せて下がることがあります。

治療後の保定の重要性

装置を外した後、保定装置を指示どおりに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。矯正治療は一度始めると元の状態に戻すことが難しくなるため、治療後の保定期間も治療の一部として重要です。顎の成長発育により噛み合わせや歯並びが変化する可能性や、加齢や歯周病などにより歯を支える骨が痩せると歯並びや噛み合わせが変化することもあります。

これらのリスクを最小限に抑えるためには、専門医の指示に従った適切なケアと定期的なメンテナンスが不可欠です。当院では、治療中から治療後まで、長期的な視点でお口の健康をサポートいたします。

まとめ

骨格性不正咬合の治療には、手術矯正と補助矯正という2つの主要なアプローチがあります。手術矯正は骨格的な問題を根本から解決できる治療法であり、顎変形症と診断された場合は保険適用となります。一方、補助矯正は手術を行わずに矯正装置のみで治療を進める方法で、特に成長期のお子様や骨格的な問題が比較的軽度な場合に適しています。

どちらの治療法を選択すべきかは、患者様の年齢、骨格的な問題の程度、治療に対する希望などを総合的に考慮して決定します。治療期間や費用、リスクについても十分に理解した上で、専門医と相談しながら最適な治療方針を決定することが重要です。

当院では、各専門ドクターがチーム体制で治療を行う「真のチーム歯科医療」を提供しています。矯正歯科治療を最も得意とし、マウスピース矯正にも対応しています。充実した医療設備を整え、質の高い治療をご提供いたします。お口まわりのお悩みは何でもお気軽にご相談ください。

詳しい治療内容や費用については、歯科・矯正歯科 GOOD SMILEの公式サイトをご覧いただくか、直接お問い合わせください。皆様の笑顔のために、最適な治療をご提案いたします。

監修者情報

歯科・矯正歯科 GOOD SMILE院長 薄井陽平

保有資格など 歯学博士
松本歯科大学 小児歯科学講座 非常勤講師
略歴 2001年3月 松本歯科大学歯学部卒業
2001年4月 歯科医師免許取得
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座入局
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座医員
2003年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助手
2004年4月 松本歯科大学 硬組織疾患制御再建学講座
臨床病態評価学博士課程入学
2007年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教
2009年6月 学位取得(歯学博士)
2012年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教 教任期満了
2015年10月 松本歯科大学 小児科学講座 非常勤講師就任

ごあいさつ

はじめまして、GOOD SMILEの薄井です。歯・矯正に関することはもちろん、口腔内のお悩みなら何でもご相談ください。患者様のお悩みが解消できるよう、もっとも合う治療方法について一緒に考えさせていただきます。

Back To List

記事一覧に戻る