インビザライン矯正とは?基本的な理解から始めましょう
インビザラインは、透明なマウスピース型の矯正装置です。従来のワイヤー矯正とは異なり、目立ちにくく着脱可能という大きな特徴があります。
このマウスピース矯正は、3Dスキャンデータをもとに患者さん一人ひとりの歯に合わせて作製されます。治療計画に沿って複数のマウスピースを順番に装着していくことで、少しずつ歯を理想的な位置へ動かしていきます。
透明で目立ちにくいため、人前に出る機会が多い方や見た目を気にされる方に特に人気があります。また、食事や歯磨きの際に取り外せるため、日常生活への影響が少ないというメリットもあります。
ただし、インビザラインは薬機法(医薬品医療機器等法)においてまだ承認されていない医療機器です。世界100カ国以上で提供され、多くの患者さんが治療を受けていますが、日本では完成物薬機法対象外の装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があることを理解しておく必要があります。
インビザライン矯正の費用相場はどれくらい?
インビザライン矯正の費用は、治療するプランや歯並びの状態によって大きく変わります。短い文章で説明すると分かりにくいので、詳しく解説していきましょう。
インビザライン矯正の費用相場は、部分矯正の場合は50〜70万円、全体矯正の場合は70〜120万円程度となっています。これは2025年現在の一般的な相場です。
費用は主に以下のプラン別に分けられます:
- インビザライン コンプリヘンシブ(旧インビザライン フル):70~120万円
- インビザライン モデレート:50~90万円
- 部分矯正(ライト・エクスプレスなど):35~70万円
従来のワイヤー矯正と比較すると、インビザラインは表側ワイヤー矯正とほぼ同水準の費用となっています。参考までに、表側ワイヤー矯正は60〜130万円、裏側ワイヤー矯正は100〜170万円が相場です。
インビザライン コンプリヘンシブの特徴と費用
インビザライン コンプリヘンシブは、すべての歯を対象とした矯正プランです。軽度から重度の歯並びの乱れまで幅広く対応できるため、多くの方に選ばれています。
費用が70〜120万円と幅があるのは、歯並びの状態や必要なマウスピースの枚数、治療期間などによって変わるためです。治療期間が長くなるほど費用も高くなる傾向があります。
重度の歯並びの乱れがある場合や、複雑な歯の移動が必要な場合は、上限に近い費用がかかることが多いです。一方、比較的軽度の歯並びの乱れであれば、下限に近い費用で済むこともあります。
インビザライン モデレートの特徴と費用
インビザライン モデレートは、中程度の歯並びの乱れに対応したプランです。コンプリヘンシブよりも比較的費用を抑えつつ、しっかりと矯正したい方に向いています。
費用相場は50〜90万円で、治療期間はケースによって異なりますが、コンプリヘンシブよりも短い傾向があります。本格的な矯正が必要な場合に、コストと治療効果のバランスが取れたプランとして選ばれることが多いのが特徴です。
モデレートプランは使用するマウスピースの枚数に制限があるため、複雑な症例には向かない場合があります。そのため、事前の診断で適応かどうかを確認することが重要です。
インビザライン矯正費用の内訳を詳しく解説
インビザライン矯正の費用は、一括で表示されることが多いですが、実際にはいくつかの項目に分かれています。これらの内訳を理解することで、なぜその費用が必要なのかが明確になります。
インビザライン矯正の費用内訳は主に以下の3つに分けられます:
- 矯正前にかかる検査・診断料
- 矯正中にかかる調整料
- 矯正後にかかる保定装置料や観察料
それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
矯正前にかかる検査・診断料
インビザライン矯正を始める前には、歯や顎の状態を詳しく調べるための検査が必要です。これには以下のような項目が含まれます:
- 初診料・相談料:0〜5,000円程度
- レントゲン撮影料:5,000〜10,000円程度
- 歯型取り・3Dスキャン料:10,000〜30,000円程度
- 診断料・治療計画作成料:30,000〜50,000円程度
これらの検査は、適切な治療計画を立てるために不可欠です。特に3Dスキャンは、インビザラインのマウスピースを作製するための重要なステップとなります。
なお、多くの歯科医院では初回相談を無料で行っているところもありますので、複数の医院で相談することをおすすめします。
矯正中にかかる調整料
矯正治療中には、定期的な通院と調整が必要です。この費用には以下のような項目が含まれます:
- マウスピース製作費:全体の大部分を占める主要費用
- 定期検診料:1回あたり3,000〜10,000円程度
- 調整料:必要に応じて発生
- アタッチメント(歯に付ける小さな突起)装着料:必要に応じて発生
インビザライン矯正では、通常6〜8週間に1回程度の通院が必要です。ワイヤー矯正の約4週間に1回と比べると、来院頻度は少なめです。ただし、治療期間全体としては、成人矯正の場合、一般的に1年半〜3年を要します。
矯正後にかかる保定装置料や観察料
矯正治療が終わった後も、歯が元の位置に戻らないようにするための「保定」という期間があります。この費用には以下のような項目が含まれます:
- 保定装置製作費:20,000〜50,000円程度
- 定期観察料:1回あたり3,000〜5,000円程度
保定装置を指示通りに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなるため、この期間の管理も重要です。保定期間は個人差がありますが、一般的に矯正期間と同程度かそれ以上の期間が必要とされています。
インビザライン矯正の追加費用で注意すべきポイント
インビザライン矯正を始める前に、基本費用以外にも追加で発生する可能性のある費用について知っておくことが大切です。思わぬ出費を避けるためにも、以下のポイントに注意しましょう。
特に気をつけたいのは、治療途中での計画変更や予想外の状況による追加費用です。事前に医師とよく相談し、どのような場合に追加費用が発生するのかを確認しておくことをおすすめします。
複数のクリニックで費用を比較する
インビザライン矯正の費用はクリニックによって異なります。同じ治療内容でも、医院によって10〜30万円程度の差が出ることもあります。
費用の違いには、以下のような理由が考えられます:
- 歯科医師の経験や技術レベル
- クリニックの立地や設備
- アフターケアの充実度
- 分割払いなどの支払い方法の有無
単に費用の安さだけで選ぶのではなく、医師の経験や実績、アフターケアの内容なども含めて総合的に判断することが大切です。少なくとも2〜3院は比較検討することをおすすめします。
どうしますか?あなたの歯並びに合った最適な治療法を見つけるために、複数の医院で相談してみませんか?
治療期間が延びないよう装着時間やルールを守る
インビザラインの治療効果を最大限に得るためには、1日20時間以上の装着が推奨されています。これを守らないと、治療計画通りに歯が動かず、治療期間が延びてしまう可能性があります。
治療期間が延びると、以下のような追加費用が発生する可能性があります:
- 追加のマウスピース製作費
- 追加の通院・調整費
- 治療計画の再設計費用
また、マウスピースの紛失や破損にも注意が必要です。取り外し可能という便利さがある反面、紛失するリスクもあります。紛失した場合は再製作費用が発生しますので、専用ケースを活用するなど管理には十分気をつけましょう。
インビザライン矯正の費用負担を軽減する方法
インビザライン矯正は決して安い治療ではありませんが、費用負担を軽減するためのいくつかの方法があります。ここでは、実際に活用できる4つの方法をご紹介します。
費用面での不安は多くの方が抱えるものです。しかし、適切な方法を知ることで、より計画的に治療を進めることができます。
①デンタルローン(分割払い)を活用する
多くの歯科医院では、高額な矯正治療費用の負担を軽減するために、デンタルローンや医療ローンなどの分割払いに対応しています。
分割払いのメリットは、一度に大きな金額を支払う必要がなく、月々の支払いを自分の予算に合わせて調整できることです。例えば、100万円の治療費を36回払いにすると、月々約28,000円程度の支払いになります。
ただし、金利がかかる場合もありますので、総支払額や金利についても事前に確認しておくことが大切です。医院によっては無金利キャンペーンを行っているところもありますので、そうした情報もチェックしておくとよいでしょう。
②医療費控除を申請する
インビザライン矯正を含む歯科治療費は、一定の条件を満たせば医療費控除の対象となります。年間の医療費が10万円を超えた場合(または所得が200万円未満の場合は所得の5%を超えた場合)、確定申告をすることで税金の一部が還付されます。
医療費控除を受けるためには、以下の点に注意しましょう:
- 領収書は必ず保管しておく
- 治療内容が医療費控除の対象であることを確認する
- 確定申告の期間(通常2月16日〜3月15日)に申告する
矯正治療は高額になることが多いため、医療費控除を活用することで数万円から十数万円の税金還付を受けられる可能性があります。
③部分矯正を検討する
見た目が気になる前歯だけを矯正する「部分矯正」を選択することで、費用を抑えることも可能です。部分矯正の費用は35〜70万円程度で、全体矯正よりも安く済むことが多いです。
ただし、部分矯正には以下のような注意点があります:
- 噛み合わせなど機能面の改善には限界がある
- 症例によっては部分矯正が適さない場合がある
- 後に全体矯正が必要になる可能性もある
部分矯正が適しているかどうかは、歯並びの状態や治療の目的によって異なります。まずは歯科医師に相談し、自分のケースに最適な選択肢を見つけることが大切です。
④モニター制度を利用する
一部の歯科医院では、治療経過や結果を症例として公開することを条件に、通常よりも安い費用で治療を受けられる「モニター制度」を設けているところがあります。
モニター制度を利用する際は、以下の点に注意しましょう:
- どのような条件で割引が適用されるのか確認する
- 治療写真の公開範囲や使用方法について確認する
- 通常の患者と同等の治療やケアが受けられるか確認する
割引額は医院によって異なりますが、10〜30%程度の割引が一般的です。ただし、モニター枠は限られていることが多いので、興味がある場合は早めに問い合わせることをおすすめします。
インビザライン矯正のリスクと注意点
インビザライン矯正は多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクや注意点も存在します。治療を検討する際には、これらについてもしっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、インビザライン矯正に伴う一般的なリスクや副作用、そして特に注意すべき点について説明します。
インビザライン矯正に伴う一般的なリスク・副作用
インビザライン矯正に伴う一般的なリスクや副作用には、以下のようなものがあります:
- 最初は矯正装置による不快感や痛みがある(数日〜1〜2週間で慣れることが多い)
- 装置を装着していないと効果が出ないため、自己管理が重要
- 装置の着脱を繰り返すため、紛失するリスクがある
- 症状によっては、マウスピース型矯正装置で治療できないことがある
- 装着したまま糖分の入った飲料をとると、虫歯のリスクが高まる
- まれに歯根吸収や歯肉退縮が起こることがある
- 食いしばりの癖が強い場合、奥歯が噛まなくなることがある
これらのリスクは個人差があり、すべての方に起こるわけではありません。また、多くの場合は一時的なものであり、治療の進行とともに改善することが多いです。
インビザライン治療の成功には、患者さん自身の協力が非常に重要です。1日20時間以上の装着を守り、定期的な通院を欠かさないことが、良い結果につながります。
薬機法未承認医療機器であることの意味
インビザラインは、薬機法(医薬品医療機器等法)においてまだ承認されていない医療機器です。これは以下のような意味を持ちます:
- 日本では完成物薬機法対象外の矯正装置である
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合がある
- 将来的に重大なリスク・副作用が報告される可能性がある
ただし、インビザラインは世界100カ国以上で提供されており、これまでに1,100万人を超える患者さんが治療を受けています(2021年9月時点)。多くの臨床実績があることは事実です。
未承認医療機器であることのリスクを理解した上で、信頼できる歯科医師のもとで治療を受けることが重要です。治療を検討する際には、このような法的な位置づけについても医師に質問し、十分な説明を受けることをおすすめします。
まとめ:インビザライン矯正を検討する際のポイント
インビザライン矯正の費用内訳と料金体系について詳しく解説してきました。最後に、インビザライン矯正を検討する際の重要なポイントをまとめておきます。
インビザライン矯正は、見た目の美しさと機能性を両立させる優れた治療法です。透明で目立ちにくく、着脱可能という特徴から、多くの方に選ばれています。
費用面では、部分矯正で50〜70万円、全体矯正で70〜120万円が相場となっています。この費用には、検査・診断料、マウスピース製作費、調整料、保定装置料などが含まれます。
費用負担を軽減するためには、デンタルローン(分割払い)の活用、医療費控除の申請、部分矯正の検討、モニター制度の利用などの方法があります。
インビザライン矯正は薬機法未承認の医療機器であるというリスクも理解した上で、信頼できる歯科医師のもとで治療を受けることが大切です。
最終的には、費用だけでなく、医師の経験や実績、アフターケアの充実度なども含めて総合的に判断し、自分に最適な治療法を選ぶことをおすすめします。
美しい歯並びは、見た目の印象を良くするだけでなく、噛み合わせの改善による健康面のメリットも期待できます。インビザライン矯正で理想の歯並びを手に入れ、自信を持って笑顔を見せられるようになりましょう。
より詳しい情報や個別のご相談は、山梨県甲府市の「歯科・矯正歯科 GOOD SMILE」にお問い合わせください。専門ドクターによるチーム体制で、あなたに最適な矯正治療をご提案いたします。
詳細は矯正歯科のウェブサイトをご覧ください。
監修者情報
氏名:薄井 陽平 先生
略歴
・2001年3月 松本歯科大学歯学部卒業
・2001年4月 歯科医師免許取得
・2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座入局
・2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座医員
・2003年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助手
・2004年4月 松本歯科大学 硬組織疾患制御再建学講座
臨床病態評価学博士課程入学
・2007年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教
・2009年6月 学位取得(歯学博士)
・2012年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教 教任期満了
・2015年10月 松本歯科大学 小児科学講座 非常勤講師就任