インプラントは10年後・20年後どうなる?長期経過から見る現実
インプラント治療を検討する際に気になる「長期的な経過」
インプラント治療を考えている方にとって、「10年後、20年後にどうなるのか」という疑問は非常に重要です。
高額な費用をかけて治療を受けるからこそ、長期的な視点で判断したいと思うのは当然のことでしょう。実際に、インプラントの寿命や長期経過に関する研究は世界中で行われており、多くのデータが蓄積されています。
この記事では、歯科医師として長年インプラント治療に携わってきた経験と、最新の研究データをもとに、インプラントの10年後・20年後の現実について詳しく解説します。治療を検討されている方が、正しい知識を持って判断できるようサポートさせていただきます。

インプラントの10年後〜生存率から見る現実
インプラント治療において「10年生存率」という指標があります。
これは、インプラントを埋め込んでから10年経過した時点で、問題なく機能し続けている割合を示すものです。多くの研究では、適切な治療とメンテナンスを行った場合、10年生存率は90%以上と報告されています。
「10年持つ」の本当の意味とは
「インプラントは10年持つ」という表現をよく耳にしますが、これは「10年で必ず寿命が尽きる」という意味ではありません。
正しくは「10年以上機能を維持できる可能性が高い」という意味合いで使われます。実際、臨床データによれば、治療から10年が経過しても90%以上のインプラントが問題なく機能しているとされています。適切にケアすれば15年、20年と使い続けることも十分可能なのです。
メーカー保証期間と寿命の関係
多くのインプラントメーカーは10年保証を設けています。
これは、保証期間内に患者様の過失によらない不具合が発生した場合、無料で新しいインプラントに交換できる制度です。インプラントメーカー各社の研究・開発が進んだ結果、現在では10年という耐用年数が実現されています。ただし、手入れをきちんとしていなかったり、無理に力を入れて脱落させてしまった場合は保証の対象になりません。
メンテナンス次第で10年以上持つ理由
インプラント治療後は、年に2回の定期メンテナンスを推奨しています。
インプラントは埋入したら半永久的に使えるわけではありません。患者様自身の日常的なケアも大事ですが、同時に歯科医師によるメンテナンスも、インプラントの寿命を大きく左右します。人工物なので虫歯にはなりませんが、その周囲は感染症や歯周病になってしまう可能性があるのです。
周囲の歯や歯茎に異常が見られれば、最悪の場合、インプラントの脱落にもつながります。歯科医師による高度なチェックやお掃除で、日常的なケアだけではどうしても行き届かない場所の状態も確認できます。細かなことかもしれませんが、メンテナンスをきちんと受けることで、インプラントの寿命は10年を超えることも少なくありません。
出典東京日本橋デンタルクリニック「インプラントの10年後はどうなる?交換の目安はどのくらい?」より作成

インプラントの20年後〜さらに長期的な視点で見た現実
10年後のデータだけでなく、20年後のデータも重要な判断材料になります。
日本口腔インプラント学会倫理審査委員会から承認を得て実施された調査研究では、20年以上経過したインプラント患者509名を対象にアンケートが行われました。その結果、78%が「特に問題ない」と回答しています。
20年以上経過したインプラントの実態
アンケートに回答した人の約90%は、60〜80歳代を占めています。
つまり、40〜60歳代でインプラント治療を受けた人のほとんどは、20年以上経過した今でも不自由なくインプラントが使えていると答えたのです。これは非常に有益なデータといえるでしょう。インプラントを除去した経験があると答えた人は全体の14%にとどまっており、そのうちの33%は再度インプラント治療を受けたようです。
一生涯使える可能性について
最長で40年以上持った例も記録されています。
インプラント治療を最初に行った患者様は、すでに亡くなられていますが、インプラントは治療後から亡くなるまでの40年以上、大切に使われ続けました。この記録は、インプラントが半永久的に使える証拠でもあり、インプラントの信頼性が証明された出来事でもあります。実際に同じインプラントを40年以上使用するとなると、日頃のケアやメンテナンスは必須です。
長期生存率に関する海外研究データ
海外の長期研究でも、インプラントの高い生存率が報告されています。
Adellらの研究では、20年間でインプラントの生存率は82%と報告されています。Weberらの研究では、15年間の追跡調査で生存率は93%とされており、20年にわたるデータも含まれています。Hermannらの長期的な追跡調査では、20年間でインプラントの生存率は85%と報告されています。
出典関デンタルオフィス「インプラント治療から20年後はどうなってる?」より作成
前歯のインプラントの10年後に起こりうる変化
前歯は目立つ部分だけに、長期経過が特に気になる方も多いでしょう。
前歯のインプラントは、奥歯などの他の部分に比べて難しいと言われています。その理由は主に「上顎の骨が薄い」「前の歯茎が痩せやすい」「高い審美性が求められる」の3つが挙げられます。
被せ物の変化について
10年経過後には、被せ物に変色や破損などの変化が起こる可能性があります。
前歯は食事の際にも良く使うため、表面が少しずつ削れていき着色や変色が起こることがあります。奥歯なら気にならない程度でも、前歯の変化は他の歯との差がわかりやすく、違和感があって目立つと感じるかもしれません。ただし、変色や破損の少ない素材を選ぶ、保証期間内に交換するなどの対応も考えられます。
歯肉の変化と審美性への影響
年を重ねると歯肉にも変化があります。
退縮や変色などが起こると、インプラントの周囲に影響を与えることがあります。歯肉の退縮は「歯肉が下がってくる」と表現されることもあり、これによりインプラントの金属部分が露出したり、影ができたりすると、審美性を保つのが難しくなります。歯肉の退縮は、インプラント周囲炎や、強い力でブラッシングしていたなどの原因で起こることが多いです。
骨の変化とインプラントの安定性
10年経過すると骨にも変化があります。
インプラント体が埋め込まれた顎の骨の状態が変わる可能性があります。骨密度は加齢や健康状態により低下することがあり、インプラントを支える強度が保てなくなる恐れがあります。顎の骨とインプラント体の結合状態も、10年以上の長期使用で弱まることがあるため、定期的なチェックが不可欠です。
出典辻岡歯科「前歯のインプラントの10年後は?変化の様子や長持ちさせるポイント」より作成
インプラントを長持ちさせるために必要なこと
インプラントの寿命を延ばすためには、いくつかの重要なポイントがあります。
定期的なメンテナンスの重要性
年に2回の定期メンテナンスは必須です。
歯科医師による専門的なチェックとクリーニングで、日常的なケアだけでは行き届かない部分の状態を確認できます。異常があればすぐに処置してもらうこともできるため、トラブルの早期発見・早期対応が可能になります。メンテナンスをきちんと受けることで、インプラントの寿命は大きく延びることが分かっています。
毎日のセルフケアの徹底
インプラント周囲の清掃は特に重要です。
インプラント自体は虫歯になりませんが、周囲の歯茎や骨は感染症にかかる可能性があります。歯間ブラシやフロスを使って、インプラント周囲の汚れをしっかり除去することが大切です。ブラッシングの際は、強すぎる力で歯茎を傷つけないよう注意しましょう。適切な清掃方法については、歯科医師や歯科衛生士から指導を受けることをおすすめします。
禁煙または減煙の実践
喫煙はインプラントの寿命を縮める大きな要因です。
タバコに含まれる有害物質は、血流を悪化させ、骨とインプラントの結合を弱めます。また、歯周病のリスクも高まるため、インプラント周囲炎の発症率が上がります。インプラント治療を受けるのであれば、禁煙が理想的ですが、難しい場合は減煙から始めることも検討してください。
歯ぎしりや食いしばり対策
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は注意が必要です。
強い力がインプラントにかかり続けると、被せ物の破損やインプラント体への負担が増大します。就寝時にマウスピースを装着するなど、適切な対策を講じることで、インプラントへの過度な負担を軽減できます。歯ぎしりや食いしばりの自覚がある方は、歯科医師に相談してください。

インプラントの寿命が近づいているサイン
インプラントの寿命が近づいている時には、いくつかの症状が現れます。
噛んだ時の違和感や痛み
噛んだ時にインプラントに違和感や痛みがあったら要注意です。
顎の骨に埋め込まれているインプラントは、通常は噛んだ時に違和感や痛みが出ることはありません。違和感や痛みがあるときは、噛み合わせの問題があったり、インプラントが埋め込まれている周囲に炎症が起きている可能性があります。早めに歯科医院を受診することをおすすめします。
歯茎の腫れや出血
インプラント周囲の歯茎が腫れたり、膿や血が出たりする場合は、インプラント周囲炎の可能性があります。
インプラント周囲炎は、天然歯でいう歯周病にあたり、歯垢や歯石を放置すると細菌がインプラント周囲の組織に炎症を起こし、やがて顎の骨が溶けてしまいます。骨の支えを失うと、インプラントがグラついたり脱落してしまうこともあるため、早期の治療が重要です。
インプラントのグラつき
インプラントがグラつくのは、寿命が近づいている明確なサインです。
骨との結合が弱まっている、または骨が吸収されている可能性があります。グラつきを感じたら、すぐに歯科医院を受診してください。放置すると、インプラントの脱落だけでなく、周囲の骨や歯にも悪影響を及ぼす可能性があります。
出典ながた歯科「インプラントの寿命がきたらどうする?寿命年数と延ばす方法も解説」より作成
GOOD SMILEのインプラント治療へのアプローチ
当院では「真のチーム歯科医療」を提供しています。
インプラント治療においても、各専門ドクターがチーム体制で治療を行うことで、「町の開業医」と「大学病院」両方のメリットを兼ね備えた高品質な治療を実現しています。
精密診断と精密治療の重視
インプラント治療で大切なのは、精密診断と精密治療です。
当院では、まず土台となる顎の骨や歯周組織を健康に導きます。歯周病に罹患している場合は、専門医による口腔内改善から行います。歯科用拡大鏡(マイクロスコープ)や歯科用CTなどの充実した医療設備を導入し、質の高い治療をご提供しています。
長期的な視点でのサポート体制
治療後の定期的なメインテナンスを推奨しています。
さまざまな治療を行ったあと、口腔ケアを怠ると、再びお口のトラブルに見舞われてしまいます。そうならないように毎日のセルフケアに定期的なプロフェッショナルケアを加えましょう。長い目で見たお口の健康サポートをいたします。
徹底した衛生管理
院内感染予防対策を徹底しています。
治療器具はヨーロッパでもっとも高い基準をクリアする滅菌器を活用しています。紙コップやエプロン、グローブなどはディスポーザブル品(使い捨て)を採用しており、安心して治療を受けていただける環境を整えています。
まとめ〜インプラントの長期経過と向き合うために
インプラントは、適切な治療とメンテナンスを行えば、10年後も20年後も問題なく使い続けられる可能性が高い治療法です。
研究データでは、10年生存率が90%以上、20年後も78%以上の方が問題なく使えていると報告されています。最長で40年以上使い続けた例もあり、一生涯使える可能性も十分にあります。
ただし、そのためには定期的なメンテナンスと毎日のセルフケアが不可欠です。禁煙や歯ぎしり対策なども、インプラントの寿命を延ばす重要な要素になります。違和感や痛み、歯茎の腫れ、グラつきなどのサインが現れたら、早めに歯科医院を受診することが大切です。
インプラント治療は「治療して終わり」ではなく、「治療後の習慣と管理によって未来が変わる」治療法です。長期的な視点で、お口の健康を守っていきましょう。
インプラント治療に関するご相談や、長期的なメンテナンスについて詳しく知りたい方は、ぜひ当院までお気軽にお問い合わせください。患者様一人ひとりに適した治療方法について、一緒に考えさせていただきます。
歯科・矯正歯科 GOOD SMILEでは、専門ドクターによるチーム体制で、質の高いインプラント治療をご提供しています。詳細はこちらからご確認ください。

記事監修
歯科医師:下地 茂弘
歯学博士