2025.12.26
コラム

インプラント周囲炎とは?放置すると危険な症状と予防法を徹底解説

インプラント周囲炎とは?放置すると危険な症状と予防法を徹底解説

インプラント治療を受けた後、何よりも大切なのは「その後のケア」です。

せっかく高額な費用と時間をかけて手に入れたインプラントが、数年後に使えなくなってしまう……そんな事態を招く原因の一つが「インプラント周囲炎」です。

インプラント周囲炎は、インプラントを支える歯茎や骨に炎症が起こる病気で、天然歯における歯周病に似ています。しかし、進行スピードは歯周病の10~20倍とも言われ、気づいたときには重症化していることも少なくありません。痛みがほとんどないため、自覚症状が出にくいことも特徴の一つです。

この記事では、インプラント周囲炎の症状や原因、そして放置してはいけない理由について、詳しく解説します。

インプラント周囲炎とは?基本的な知識

インプラント周囲炎とは、インプラントの周辺組織に炎症が起こる病気です。

インプラント治療では、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込みます。インプラント自体は人工物なので虫歯にはなりませんが、周囲の歯茎や骨は生体組織です。口腔内が不衛生な状態になると、歯周病菌が増殖し、インプラント周囲の組織に炎症を引き起こします。

天然歯の場合、歯と骨の間には「歯根膜」という組織があり、細菌の侵入を防ぐバリアの役割を果たします。しかし、インプラントにはこの歯根膜がありません。そのため、細菌が骨に到達しやすく、炎症の進行が非常に速いのです。

インプラント周囲粘膜炎との違い

インプラント周囲炎の前段階として、「インプラント周囲粘膜炎」があります。

インプラント周囲粘膜炎は、炎症が周囲の歯茎に限局している状態です。歯茎の赤みや腫れ、歯磨き時の出血などが見られますが、骨にはまだ影響が及んでいません。この段階で適切な処置を行えば、インプラント周囲炎への進行を防ぐことができます。

一方、インプラント周囲炎は、炎症が歯茎から歯槽骨にまで広がった状態です。骨の破壊が進むと、インプラントを支えきれなくなり、最終的にはインプラントの脱落につながります。

インプラント周囲炎の症状~初期から末期まで

インプラント周囲炎は、段階的に進行します。

初期段階では目立った症状が現れないため、早期発見が非常に難しい病気です。天然歯の歯周病であれば、初期段階でも出血することがあり、異常に気づきやすいのですが、インプラント周囲炎は気づきにくく、重症化しやすいという特徴があります。

初期症状

初期段階では、インプラント周辺の歯茎が赤く腫れ、柔らかい感じになります。

歯磨きの際に軽い出血が見られることもありますが、痛みはほとんどありません。この段階で歯科医院を受診し、患部の洗浄やプラーク・歯石の除去といった処置を受ければ、症状の進行を防ぐことができます。

しかし、些細な変化なので自分で気づくことは難しく、定期検診をきちんと受けていなければ見過ごされてしまいます。

中期症状

中期では、歯磨きの際に歯茎から出血したり、食事や会話の際にインプラントが不安定になっている感覚を感じたりします。

歯周ポケット(歯やインプラントの周りにある薄い溝の部分)がかなり深くなっていることが、歯科医の診察時に確認できます。痛みはほとんどありませんが、この段階になると周囲炎の治療として、インプラントの周りの歯茎を切開し、侵入している細菌を殺菌する必要があります。

歯茎の切開から手術時の傷が治るまでに3カ月ほどかかります。

末期症状

末期では、顎の骨(歯槽骨)と結合していたインプラントが脱落した状態になっており、食事の際に物を噛むと痛みを感じたりします。

また、歯茎が膿んで口臭がすることもあります。歯茎を押したときに膿が出るようになり、同時に歯茎が下がって歯周ポケットが形成されるので、インプラント体が露出する方もいます。

この段階になると、一度インプラントを抜き、患部の治療を行う必要があります。治療後にインプラントを埋め込むことも可能ですが、その場合は改めてインプラント治療を最初から行うことになります。また、入れ歯やブリッジなど、インプラントではない治療法を選択することもあります。

インプラント周囲炎の原因とリスク要因

インプラント周囲炎の最大の原因は「歯周病菌」です。

口腔内が不衛生な状態になり、歯周病菌が増殖することによって引き起こされます。歯磨きがきちんとできていないと、歯周病菌は増殖してしまいます。歯科医院の定期的なメンテナンスを受けていない場合も、落としきれない汚れが溜まってしまうので、注意が必要です。

セルフケアや定期検診を怠っている

インプラント周囲炎を予防するためには、口腔内を清潔に保つ必要があります。

飲食後に歯磨きをすることはもちろん、磨き残しを避けるために丁寧なブラッシングを心がけることが大切です。歯ブラシだけでは磨きにくい部分があるので、歯間ブラシやデンタルフロスも使用したほうがよいでしょう。

定期検診も非常に重要です。定期検診では、セルフケアでは除去できない汚れや歯石を専門家が取り除きます。インプラント周囲の健康状態を保ち、早期に問題に対応できるのです。

喫煙習慣がある

インプラント周囲炎の発生には、血行の悪化が大きく関係します。

タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血流を阻害し、歯茎の健康に悪影響を与えるでしょう。ニコチンには血管を収縮させる作用があり、歯茎に必要な酸素や栄養素の供給を阻害します。喫煙習慣があると、歯茎の健康を維持することが困難になり、感染症や炎症に対する抵抗力が低下するのです。

一酸化炭素は血液の酸素の運搬能力を低下させるため、歯茎に十分な酸素が供給されなくなります。そのため、喫煙している方はインプラント周囲炎のリスクが高いです。

糖尿病や貧血などの基礎疾患がある

基礎疾患がある状態でインプラントを埋入した場合、疾患によってはインプラント周囲炎になる可能性が高まります。

糖尿病の方は、血糖値が高いと細菌に対する抵抗力が弱くなります。歯周病菌も同様です。糖尿病の場合、インプラント治療自体が行えない場合がありますが、血糖値のコントロールができていれば、インプラント治療を行うことができる場合もあります。インプラント治療を行うことができた場合には、インプラント埋入後も、糖尿病のコントロールを引き続き注意していく必要があります。

また、貧血の方は血液中の酸素が少ないことから、インプラント埋入後の傷が感染症を引き起こしやすいと考えられています。インプラント周囲炎の発症につながるおそれがあるでしょう。

歯ぎしりや食いしばりの癖がある

歯ぎしりや食いしばりなど、インプラント治療を行った部分に負荷をかける癖のある方も、インプラント周囲炎になりやすいとされています。

過度な力がインプラントにかかると、周囲の骨や歯茎に負担がかかり、炎症を引き起こしやすくなります。

インプラント周囲炎を放置してはいけない理由

インプラント周囲炎は軽視されることも少なくありませんが、放置せずに速やかに治療することが推奨されています。

インプラントを維持できなくなる

インプラント周囲炎になると、最終的には顎の骨が溶け出します。

インプラント体は顎の骨に埋入するため、最終的にはインプラントが脱落するでしょう。顎の骨が溶けた部位には、今後インプラント治療ができません。インプラント治療ができないと入れ歯やブリッジで歯を補うことになり、機能性・審美性に影響を及ぼすでしょう。

ほかの歯が歯周病になるリスクがある

インプラント周囲炎の原因は歯周病菌です。

インプラント周囲炎になって仮にインプラント体を抜いたとしても、歯周病菌は口腔内に残り続けます。そのため、ほかの歯が歯周病となるリスクが高まります。また、インプラント周囲炎によってインプラントがぐらぐらしている場合は、噛み合わせも悪くなるでしょう。ほかの歯に影響を及ぼすリスクがあるのです。

全身の健康に影響を及ぼす可能性がある

歯周病菌は、口腔内だけでなく全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。

歯周病菌が血流に乗って全身に広がると、心疾患や糖尿病の悪化、誤嚥性肺炎などのリスクが高まることが知られています。インプラント周囲炎も同様に、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の治療が重要です。

インプラント周囲炎の治療方法

インプラント周囲炎の治療方法は、症状の進行度によって異なります。

軽度の場合:非外科的治療

軽度のインプラント周囲炎では、非外科的治療が行われます。

患部の洗浄やプラーク・歯石の除去といった処置を行い、炎症の進行を防ぎます。同時に、ご自宅でどのようにセルフケアを行っているかチェックし、磨き残しが生じている原因を突き止めて正しいケアを改めてレクチャーします。

中等度から重度の場合:外科的治療

中等度から重度のインプラント周囲炎では、外科的治療が必要になります。

インプラントの周りの歯茎を切開し、侵入している細菌を殺菌する処置を行います。歯茎の切開から手術時の傷が治るまでに3カ月ほどかかります。重度の場合は、インプラントを一度撤去し、患部の治療を行った後、再度インプラント治療を行うこともあります。

インプラント周囲炎の予防法

インプラント周囲炎を予防するためには、以下の3つが重要です。

毎日の歯磨きの徹底

インプラント周囲炎を予防するためには、毎日の丁寧なブラッシングが欠かせません。

歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使って、汚れやプラークを着実に落としていきます。インプラントの周辺は特に注意深く磨くようにしましょう。

定期的なメンテナンス

インプラント周囲炎を予防するためには、定期的にメンテナンスを受ける必要があります。

インプラントのメンテナンスでは、レントゲン検査、唾液検査による細菌の繁殖状況のチェック、歯茎の腫れや排膿の有無、インプラント体のぐらつき、口腔内の清掃状態の確認、歯磨き指導などが行われます。定期的なメンテナンスを受けることで、早期発見・早期治療が可能になり、インプラントを長く使い続けることができます。

生活習慣の改善

喫煙など血行を悪くする生活習慣をなるべく辞めること、歯ぎしりや食いしばりの癖を改善することも、インプラント周囲炎の予防につながります。

また、糖尿病や貧血などの基礎疾患がある場合は、しっかりとコントロールすることが重要です。

まとめ

インプラント周囲炎は、インプラントを支える歯茎や骨に炎症が起こる病気で、放置すると最終的にはインプラントの脱落につながります。

初期段階では目立った症状が現れないため、早期発見が非常に難しい病気です。しかし、定期的なメンテナンスと毎日の丁寧なセルフケアを行うことで、インプラント周囲炎を予防し、インプラントを長く健康に保つことができます。

インプラント治療を受けた方は、インプラント周囲炎のリスクを理解し、適切なケアを心がけることが大切です。少しでも異変を感じたら、早めに歯科医院を受診しましょう。

「歯科・矯正歯科 GOOD SMILE」では、インプラント治療後のメンテナンスにも力を入れており、各専門ドクターがチーム体制で患者様の口腔内の健康をサポートしています。インプラント周囲炎の予防や治療についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

詳細はこちら:歯科・矯正歯科 GOOD SMILE

 

記事監修

Back To List

記事一覧に戻る