歯列矯正は保険適用になる?対象条件・費用・自費との違いを専門医が解説
歯列矯正の保険適用について知っておきたい基本
歯列矯正を考えている方から「保険は使えますか?」という質問をよく受けます。
結論から申し上げますと、歯列矯正は基本的に保険適用外の治療です。しかし、特定の条件を満たす場合には保険が適用されるケースもあります。
保険診療は「健康や身体の機能性に深刻な影響がある場合」に適用されるのが原則です。歯列矯正の多くは審美的な理由で行われることが多く、見た目を改善したいという目的では保険適用とはなりません。
ただし、生まれつきの疾患による噛み合わせの異常や、顎の骨格に問題があり外科手術が必要な場合など、機能的な問題を伴うケースでは保険が適用されることがあります。

保険適用となる3つの条件
先天性疾患による噛み合わせ異常
生まれつきの疾患が原因で噛み合わせに異常がある場合、保険適用の対象となります。
厚生労働省が指定する疾患は現在61種類あり、代表的なものとして「唇顎口蓋裂」「ダウン症候群」「ターナー症候群」などが挙げられます。その他にも「6歯以上の先天性部分無歯症」「クリッペル・ファイル症候群」「アラジール症候群」など、多岐にわたる疾患が対象です。
これらの疾患では、歯並びや噛み合わせの問題が日常生活に大きな影響を及ぼすため、治療の必要性が認められています。
前歯の永久歯が3本以上生えてこない場合
子どもの永久歯において、前歯が3本以上萌出しない場合も保険適用の対象となります。
ただし、「埋伏歯開窓術」という外科的処置が必要と判断された場合に限られます。前歯が生えてこないことで噛み合わせの機能に問題が生じるため、保険診療として認められているのです。
顎変形症で外科手術が必要な場合
顎の骨格に異常があり、外科手術(顎離断手術など)が必要と診断された場合、手術前後の矯正治療に保険が適用されます。
顎変形症では、上顎や下顎の位置関係に大きなズレがあり、噛む・飲み込む・話すといった基本的な機能に支障をきたします。このような症例では、矯正治療だけでなく外科手術を組み合わせた治療が必要となり、保険診療の対象となるのです。
出典日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」(2023年6月)より作成

保険適用の矯正治療を受けられる医療機関
保険適用の矯正治療は、どこの歯科医院でも受けられるわけではありません。
厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長に届け出た保険医療機関でのみ治療が可能です。具体的には「矯診」または「顎診」の指定を受けた医療機関となります。
「矯診」は歯科矯正診断料算定の指定医療機関で、先天性疾患や埋伏歯の矯正治療が可能です。「顎診」は顎口腔機能診断料算定の指定医療機関で、顎変形症の治療に対応しています。
これらの指定医療機関は、地方厚生局のホームページで検索できます。「施設基準届出受理医療機関名簿」から県別の受理医療機関リストを確認し、歯科のPDFファイルから「矯診」「顎診」の指定を受けた医療機関を探すことができます。
自費診療の矯正治療との違い
治療費の負担額
保険適用の矯正治療では、患者さんの自己負担は通常の保険診療と同じく3割となります。
一方、自費診療の矯正治療では全額が患者さんの負担となり、一般的に80万円から120万円程度、マウスピース型矯正では100万円から150万円程度の費用がかかります。保険適用の場合、この費用負担が大幅に軽減されることになります。
治療を受けられる条件
保険適用の矯正治療は、前述の3つの条件のいずれかに該当する必要があります。
自費診療では、こうした条件に関係なく、歯並びを改善したいという希望があれば治療を受けることができます。審美的な目的であっても、機能的な問題が軽度であっても、患者さんの意思で治療を選択できるのが自費診療の特徴です。
医療機関の選択肢
保険適用の矯正治療は指定医療機関でしか受けられません。
自費診療であれば、矯正治療を行っている歯科医院であればどこでも治療を受けることが可能です。医療機関の選択肢が広がることで、通院の利便性や治療方針、医師との相性などを考慮して選ぶことができます。

保険適用外でも費用負担を軽減する方法
医療費控除の活用
矯正治療が保険適用外であっても、医療費控除の対象となります。
1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、確定申告を行うことで所得税の還付を受けることができます。矯正治療費だけでなく、通院にかかった交通費も控除の対象に含まれます。
医療費控除は、治療費を支払った翌年から5年間申告が可能です。e-Taxを利用すれば自宅からオンラインで申告でき、手続きも比較的簡単に行えます。家族の医療費も合算できるため、世帯全体で医療費を管理することで控除額を増やすことができます。
デンタルローンの利用
矯正治療費を一括で支払うのが難しい場合、デンタルローンを利用する方法があります。
デンタルローンは歯科治療専用のローンで、一般的なクレジットカードの分割払いよりも金利が低く設定されていることが多いです。治療開始時にまとまった資金を用意する必要がなく、月々の支払いを計画的に行うことができます。
クレジットカードの分割払い
多くの歯科医院ではクレジットカード決済に対応しています。
分割払いやリボ払いを利用することで、治療費の負担を分散させることが可能です。ただし、金利や手数料が発生するため、総支払額が増えることを考慮する必要があります。
出典矯正歯科ネット「高額な矯正治療費を確定申告(医療費控除)e-Taxを使って申請するやり方」(2026年度版)より作成

矯正治療を検討する際のポイント
保険適用になるかどうかは、まず専門医の診断を受けることが第一歩です。
ご自身やお子さんの症状が保険適用の条件に該当するかどうかは、専門的な検査と診断が必要となります。先天性疾患の診断がある場合や、顎の骨格に明らかな異常がある場合は、保険適用の可能性を相談してみる価値があります。
保険適用外であっても、矯正治療には大きな価値があります。
歯並びや噛み合わせの改善は、見た目の美しさだけでなく、虫歯や歯周病の予防、咀嚼機能の向上、発音の改善など、さまざまな健康上のメリットをもたらします。長期的な視点で考えれば、将来的な歯科治療費の削減にもつながる投資と言えるでしょう。
まとめ:保険適用の可能性を確認しましょう
歯列矯正の保険適用は、先天性疾患・埋伏歯・顎変形症という3つの条件に限定されています。
これらの条件に該当する場合は、指定医療機関で保険診療として治療を受けることができ、費用負担を大幅に軽減できます。ご自身やお子さんの症状が該当するかどうか、まずは専門医に相談してみることをお勧めします。
保険適用外であっても、医療費控除やデンタルローンなどを活用することで、費用負担を軽減する方法があります。矯正治療は長期的な健康への投資として、前向きに検討していただきたいと思います。
当院では、患者さん一人ひとりの状況に合わせた治療方法をご提案しています。保険適用の可能性や費用面でのご不安など、どんなことでもお気軽にご相談ください。歯科・矯正歯科GOOD SMILE
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監修者情報
歯科・矯正歯科 GOOD SMILE院長 薄井陽平
保有資格など 歯学博士
松本歯科大学 小児歯科学講座 非常勤講師
略歴 2001年3月 松本歯科大学歯学部卒業
2001年4月 歯科医師免許取得
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座入局
2001年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座医員
2003年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助手
2004年4月 松本歯科大学 硬組織疾患制御再建学講座
臨床病態評価学博士課程入学
2007年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教
2009年6月 学位取得(歯学博士)
2012年4月 松本歯科大学 歯科矯正学講座助教 教任期満了
2015年10月 松本歯科大学 小児科学講座 非常勤講師就任
ごあいさつ
はじめまして、GOOD SMILEの薄井です。歯・矯正に関することはもちろん、口腔内のお悩みなら何でもご相談ください。患者様のお悩みが解消できるよう、もっとも合う治療方法について一緒に考えさせていただきます。